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Jinjoo Kim

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声のイメージ:聞いて語る

2013/06/10

 社会の厳格なシステムの境界を横断し、その間に生まれる隙間に一種の抵抗的なジェスチャーを試みるキム・ジソンは、東京とソウルという二つの場所で共に、代議制民主主義の醍醐味、選挙を目撃して経験した。それは今まで取り組んでいた「ヴァーチャル」な空間に「新しい民主主義のプラットフォーム」というテーマを投げかけた。「一般意志2.0」で東浩紀の述べる、コミュニケーションのない新しい民主主義の可能性は、2度目の滞在における主要なキーワードを生み出した。東アジア4ヵ国から来たr:eadの参加者たちは、自国の民主主義の危機について口を揃えて話していた。そのため、東の考えは、確かに言語と国家を超える新たな政治の魅力的な可能性として思われた。最近、橋下徹大阪市長の「慰安婦は必要だった」という発言に関する東のツイートが、韓国で「東浩紀の妄言」として一瞬話題になった。彼はこれについてどう思うだろうか。コミュニケーションの不可能さを前提として行う、いわゆるインターナショナルなイベントでは大概英語を共通言語としている。が、r:eadでは参加者がそれぞれの母国語を使うようにした。不完全なコミュニケーションが壁になるというよりは、越境を試みる余地を与えてくれた。その結果、お互いの差異を読み解く(read)、対話(dialogue)が可能だったのではないかと思う。実際に「一般意思2.0」の韓国語翻訳者である安天氏との出会いを含め、様々な人の知的成果のお蔭で、既存の認識を破って日本の社会を読み解くことができた。

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金珍珠(キム・ジンジュ)
韓国

1981年生まれ、ソウル在住。アーティスト兼キュレーターとして活動。2007年より、アーティスト向け集合住宅「ps」を運営。2008年に梨花女子大学校(ソウル)にて美術学修士号を取得。

psとは「ポストスクリプト(追伸)」を意味し、「おろそかにされた物語とメッセージ」を文化的かつ公的な領域に伝達する行為を追求している。psは、マイノリティと特異性の問題を取り上げながら、即興的かつ流動的で漠然とした感覚による発言の内外における目に見えない行動や関係に焦点を充ててきた。この集合住宅の立ち上げは2人のアーティストによるものだったが、現時点では彼女が一人で運営している。現在は、社会の橋渡し役として、研究、アーカイブ、参加型ワークショップ、対話の実践、そして、学際的なパフォーマンスなどの多彩な戦略を、様々なプロジェクトを通して実行することに注力している。その例として、「Agreement/Promise」 (2009年~)、「Listening Company」 (2009年~)、「Economic Love Camp」 (2012年)が挙げられる。今取り組んでいるのは、「Working (in)Holiday」 (仮名、2013年~)であり、ルポ漫画家のサンヒー・キム (Sunghee Kim) とポスト資本主義社会における生産拠点での労働と余暇を扱うものとなっている。

2009年には、ヴェネチア・ビエンナーレ韓国館「濃縮:ヘギュ・ヤン」(コミッショナー:エゥンジ・ジュ (Eungie Joo))の展覧会コーディネーター及び出版アシスタントを務めた。2006~2008年はINSAアートスペースに所属し、「John Bock: Two Handbags in a pickle」(2008年)、「Dongducheon(東豆川市) : A Walk to Remember, A Walk to Envision」(2008年)などの国際展(キュレーター:ヘージン・キム (Heejin Kim))でコーディネーター兼アシスタントキュレーターとして活動。2010年から2011年6月まで art space pool で、キュレーターとして「Sandra Eula Lee: Two Waters」 (2011年)、パブリックプログラム「Common Salon」(2011年)、「A First Reader: Cartoonist Ko Young Il’s The Hitchhiker’s Guide to The Archive Galaxy」(2010年)、「Money 2, the Manhwa(漫画)」(2011年)に関わった。また、2011~2012年には、Art and Community Networkの支部である Art and Farming で「Nest Garden Farm」 (2011年)、アーティスト・イン・レジデンスプロジェクト「Pungnyeon Super Camp」(2012年)を企画した。